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アニメはどのように海外に送られているの? 

      2016/10/14

Q.アニメスタジオはどうやってアニメを海外に送ったり、受け取ったりしているんでしょう。

インターネットで?それとも物理的にUSBを運んでる?また動画配信サイトは日本の放送局と同じように(SHIROBAKOで見たように)物理的にデータを受け取っているのでしょうか?そうでないならどんな風に?

 

A. 結論から言うと…
放送まで期間がある時はデータを外部記録媒体(HDD)に入れて送る。海外同時配信など時間がない場合はファイルをFTPソフトで転送するみたいです。


 

デジタル化でアニメはデータに
アニメがデジタル化されてから、制作会社はRETAS STUDIO(アニメーション制作ソフト)を使用するようになりました。RETASは個別のセル、カットの編成、カットの生成プロセスも保存できるため、国内外のスタジオがネットワークでつながるようになりました。

描いた原画/動画をチェックに出したり、彩色をするわけです。制作のやりとりはとても早くなりました。

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RETAS STUDIOの画面

出典:http://zerogahou.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/retas-studio-64.html

 

国内でのマスターの受け渡しは テープが主流

制作だけでなく国外代理店へのマスターデータの受け渡しも大きく変わりました。4~5年前までは日本では完全にテープベースの業務でしたが、現在もテープは日本の放送局で好んで使われる媒体です。

90-00年代 主流のビデオテープのフォーマットはD2-VTR(コンポジットデジタル記録方式)や デジベタでした(デジタルベータカムの略。まだSD画質でしたが それでも前のものより大分マシでした)

 

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デジベタ

http://studio-nao.com/shop/item/sony_digitalbetacam/

 

 

その後HD画質に変わり、大部分のスタジオがHDCamフォーマットに切り替えました。これはデジベタと互換性がありました。HDCamはスタジオにとって無理なく買える価格だったのですが、妥協する点もありました。

フルハイビジョンではない(○1440:1080 ☓1920:1080)上、データ圧縮により、しばしばバンディング(画像のハーフトーン部に出現する帯状のムラ)が発生する点です。

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出典:wikipedia

 

 

 

最終的に ほとんどのスタジオはHDCam-SRにアップグレードしました。これが現在 最善のマスターテープの規格として広く使われているものです。日本では記録保管用や、マスタリング、放送局へ運ぶ為の媒体として使用されています。

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出典:amazon.co.jp

 

(余談:ここには異論があって、ごく少数のスタジオしかHDCam-SRデッキは持っておらず、イマジカ社やSony PCLなどのポスプロダクション(撮影後の作業をする会社)でSRマスターテープを制作する所くらいしかSRデッキは持っていないのではないかと。

主要な放送局でSRデッキを放送用に使っているのはNHKくらいで、実際は標準HDCAMを媒体に使っているTV局が多い、それはなぜかというと各社 十分な数のSRのデッキを準備できないからで、NHKだけがSRに移行するだけの十分な資金があるそうな。)

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HDCAM-SR VTRデッキ 

希望小売価格は700万円

http://www.sony.jp/pro/products/SRW-5800/

 

ところで、それぞれの規格のビデオテープには固有の色のプラスチックケースがついています、SHIROBAKOの視聴者はご存知かと思いますがHDCam-SRの色は灰色がかった白です。標準のHDCamは暗いグレー。デジベタは青です

しかしSRデッキはとても高く、海外の配信元の手の届く価格帯を超えています。さらに2011年の東日本大震災はHDCam-SRを製造するソニーの工場に被害を与えたので、世界中でテープの不足が発生し、制作に影響を与えました。

 

海外との受け渡しはHDDで
これまでのアニメの歴史において、ライセンス契約を結ぶ際には、マスターテープのコピーを入手するための料金と国際配送のための運賃を出す必要がありました。この方法は(ご想像の通り)非常に費用がかかります。

基本的に欧米の発行元はHDCamデッキをわざわざ持っていません。なので日本の会社は地元のポスプロダクションや社内で、マスターテープからHDデータをキャプチャーして、ファイル化し、ごく普通のUSB3.0のHDDに入れて受け渡しをしています。

 

同時放送の場合はFTP
同時放送の場合は物理的にハードディスクをクランチロールやファニメーションに送る時間はないのでAsperaのようなソフトウェア、安全なFTPを使用して海外の配信業者にファイルを転送します。

Asperaはエンタメビジネス業界で大容量のビデオファイルを転送する為に一般的に使われているソフトウェアです。(標準的なアニメのエピソードは37GB程度ですが、特集のアニメになると簡単に100GBを超えます)

 

日本からのデータを海外で編集して配信
さて海外の会社にファイルが着いたら、CM用に挟まれている真っ暗な画面を削除する必要があるかもしれません。その後、使用する音声を選択して、指定のフォーマットにエンコード。こうして世界のアニメオタクに無事、作品がアップロードされるというわけです。

 

via:https://goo.gl/pFPSIb https://goo.gl/qrxOe0 
サムネイル画像:TVアニメ「SHIROBAKO」

 


 

そういえばSHIROBAKOでムサニはみんなで手分けして、黒いケースに入ったテープを放送局に運んでいたなーと。今見るとHDCamのケースに見え…なくもない。

海外へはマスターデータをエンコードして記録媒体に入れて送るか、ネット経由で送るかみたいですが、ネットの場合ハッキング&流出の恐れがあったりするので(たまに映画が公開前に流出してたりしますし)現物で送るのもそれなりにメリットがありそうですね。